他人事だって思ってない?防災のこといろいろな立場で一緒に考えてみませんか?
(公社)北九州市障害福祉ボランティア協会
船寄 靖子
2024年1月1日新しい年の始まりを多くの人たちが祝っている頃、能登半島地震は発生しました。未だ多くの行方不明の方の捜索が続き、中学生が親元を離れ集団避難をするなど今でも被災地に大きな爪痕を残しています。
大きな災害後に避難所の様子が映る際、障害のある人が映ることは少なく感じます。「映りたくない」「写さないで欲しい…」障害当事者の様々な思いもあるのかもしれませんが、以前、災害時の避難について意見交換を行った際に保護者の方は口を揃えて「避難はしないと思う」「家にいる」と言われていたことを思い出しました。
「避難所とはどんなところだろう?」「大きな声を出して迷惑を掛けてしまうかもしれない」不安や心配ごとがあり、簡単に避難所に行くことができないのではないでしょうか?
私たちは「知らないことや想像できないこと」に不安やストレス、無意識にそれを怖いと感じてしまいます。災害が起こって住み慣れた家から、慣れない場所に避難し生活しなければいけない不安、程度の人たちとの共同生活は気を遣うことばかりでストレスも感じると思います。障害のある人やお年寄りは、さらに物理的(段差やトイレの問題等)に『避難所に行くこと』にハードルを感じるのではないでしょうか?
しかし、それは受け入れる側(避難所を運営する行政職員や地域の役員の方たち)も同じように不安を感じるのではないでしょうか?どんな人が住んでいてどんな人が避難してくることが想定されるか、避難してきた人たちにどう接したらいいのか知っておきたいと思うかも知れません。
災害時の避難に関しては阪神淡路大震災以来多くの障害福祉関係団体の関心が高いテーマでした。中でも北九州市障害福祉団体連絡協議会では毎年関連のテーマでシンポジウムを実施したり毎年各地区で実施されている地域防災訓練への参加呼びかけなどを行ってきました。
令和5年度は門司区・小倉南区・若松区・八幡西区・戸畑区の訓練に障害のある人やその家族が参加しました。これまでは準備されているプログラムに参加したり協力したりという関わりでしたが、今回戸畑区で実施された区防災訓練では、こちらからプログラムを持ち込んでブースの一つを受け持つという新しい試みを北九州市障害福祉ボランティア協会(以下、ボラ協)が実施しました。
ボラ協の役割は、地域と障害のある人をつなぐこと(お互いに顔の見える関係になる)、どんなことに障壁(バリアー)を感じているのか、どうすれば障壁を取り除くことができるのか一緒に考え知っていただくお手伝いをすることだと思っています。
今回は事業実施後に防災訓練の事業を担当している戸畑区役所総務企画課の古森係長にお話を伺いましたので、ご紹介します。
Q 障害のある人が避難訓練に参加したいと言われた時に驚きはありましたか?
A 今回のお話を最初にした時に電動車いすの人が来られたので「あ、会場の中原小学校の体育館にスロープはあったかな?」とまず思いました。区の選挙管理委員会にスロープの有無を確認しましたが、残念ながらなかったので、北九州自立生活センター(小倉北区馬借)からお借りしました。
Q 当日は視覚障害のある人たちの日常生活や便利な機器を使っている様子、災害時の困りごとなどの当事者による講話スペースと車いすの体験スペースを設置しましたが、反響はありましたか?
A 参加した地域住民や自治会関係者の方から「やって良かった!」と言われました。来場者数は約350名、内訳については地域の方が250名、スタッフが1 0 0 名で成人が210名小・中学生が40名でした。参加者は10代、60〜70代が多く、災害時に救助等の担い手となる20〜50代の参加者が少ないのが現状の悩みです。車いすの介助についてはたくさんの方に参加をいただきました。体育館にはブルーシートを敷いていたので「押すのが大変」と言われましたが、実際の災害現場はもっと凸凹していることも考えられるのでフラットな場所での体験じゃないのが良い経験でした。
Q 「押される側も押し慣れた人じゃないと不安だよ」という声もあります。だからこそ、お互いに介助される人、介助する人、地元の人同士の顔が見える関係が大切ですよね?
A そうですね、まずは、障害のある人にも避難訓練に出て来ていただくことが大切ですね。
Q 障害のある人の参加のために何か配慮したことはありますか?
A 先程話したスロープと、今回はブースの出展者として視覚に障害のある人に参加していただいたので、地元の高校生が防災講話を行う時の配慮として、今ステージで何が行われているか視覚に障害のある人への情報提供が必要だと伺い、高校の先生に相談したところ、情報提供する学生さんに傍に付いて貰うことができました。また、今回参加はありませんでしたが、聴覚に障害のある方に情報提供を行うための手段として筆談用具を用意していました。
古森係長以外にも社会福祉協議会や北九州市立高等学校の先生などからも「どんな障害のある人が住んでいるのか分からない」「どう接したらよいかわからない」「地域の皆さんもやる気はあるので、関わる機会がもっと何かあればよいのに」等の声がある中で、今回、地元に住んでいる障害のある人や地元にある障害者関連施設の方々と地域の方たちを繋ぐブースを持ったことを第一歩だと評価していただきました。障害のある人たちにもっと関わってほしいとの声もいただきました。