北九州生まれ、視覚障害者向けの歩行支援アプリ「Eye Navi(アイナビ)」をご紹介します
〈公社〉北九州市障害福祉ボランティア協会 宮﨑 浩
Eye Naviをご存知ですか?
「 (目的地)まで〇× メートルです。 〇メートル進んで右です。 〇メートル進んで左です ・ ・ ・ 」 「横断歩道。 点字ブロ ック。 車 ・ 車 ・ 信号は赤プ ・ プ ・ プ ・ ・ 」 「人 ・ 人 ・ 信号は青ピ ・ ピ ・ ピ ・ ・ ・ 」 「右を向いてください。 正しい方向です。 3時の方向にコンビニ ・ ・ 」 「目的地付近です」 このような音声ガイドがiPhoneから聞こえます。
スマホを首から下げて外を歩くと、音声で信号や障害物への注意を促しながら、目的地まで道案内をしてくれます。
そんな画期的な視覚障害者向けの歩行支援アプリ「Eye Navi (以下:アイナビ) 」の無償配信が始まりました。
視覚障害のある人が外出するには?
同行援護や盲導犬によるサポートが必要です。しかしながら、どちらも絶対数が不足しており、規則上の制限もあって、日常生活を支えるには十分とは言えません。
そこで、視覚障害のある人が、ひとりで自由に外出できるようにとのコンセプトでアイナビが開発されました。
ひとりで外出する時は?
多くの人がスマホの地図アプリによる音声案内を使用しています。しかし、この地図アプリの音声案内だけでは、信号の色や障害物を検知できないため、こわごわ道を歩かなければなりません。歩行支援用にカメラ機能が付いた機器が他にもあるのですが、アイナビは、 首からスマホを下げるだけという実にシンプルな利用方法なのです。このスマートフォンの背面カメラが、まさに瞳の代わりとなってサポートしてくれます。
日進月歩
歩行者用信号の「赤・青」をはじめ、自転車、車、ガードレール、縁石、壁、ポールなどと、路上は、障害物にあふれています。これらを検知、認識する機能を可能としているのがAIによる画像認識です。
歩行者用信号一つを取っても、いろいろな角度で撮影したり、朝、夕であったり、晴天、 雨天であったりと、数多の画像データをAIに読み込ませています。これらの画像データは100万枚にのぼるとのこと。アイナビは、そんな地道な作業の蓄積によって構成され、そして、今もなお、この作業は続いているのです。
他にも機能として、歩行時の事故などが検証できるよう映像を保存するレコーダー機能もあり、さらに、オペレータとの対話ができるようになれば、室内の誘導や買物サポート、 転倒でハプニング時での対応も可能となってきます。
北九州から発信!!
アイナビを企画、開発したのは、八幡東区にあるコンピュータサイエンス研究所というベ ンチャー企業。そう、アイナビは北九州生まれなのです。
社長で開発者の林 秀美さんは、20年前から視覚障害のある人と交流する中で、ロボット型の盲導犬が作れないかと構想を練っていました。その後、退職後に会社を立ち上げ再チャレンジ。 試行錯誤を繰り返しながら、ずっと想っ てきた夢を結実させアイナビが生まれました。
ユーザーと共に
こだわりは、常にユーザー目線であるということ。多様な機能を持つほどに複雑な機器になりがちなところ、視覚障害のある人が、使うということを一番に考えシンプルなものになっています。開発当初より、視覚障害のある当事者からの要望や苦情を真摯に受け止め、フィードバ ックしながらアイナビは育ちました。
アイナビは、iOS15以上で利用できるアプリとなっており、想定する利用者は、視覚障害のある人で単独歩行ができ、この操作が可能な方としています。また、条件によっては完全に検知機能が働かないこともあります。これらのことからアイナビは、まだ成長過程にあると言えるでしょう。
この度、無償での配信を始めたのも、とにかく、このアプリを多くの人に使ってほしい。 その上で、評価や感想をいただき、アイナビをみんなで育ててもらいたいとの思いが詰ま っているからなのです。
林社長が描く理想社会は、スターウォーズに出てくるようなロボットが、視覚障害のある人と一緒に歩いてサポートしている光景です。近い将来、そんな楽しい夢が実現しそうな気がします。
(株)コンピュータサイエンス研究所
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