「聴こえない娘と映画へ」
上 原 藍
バリアフリー上映というものをご存じでしょうか?
洋画には当然のように字幕付き上映があります。
しかし、邦画には字幕付き上映はほとんどありません。
日本語を話しているので当然と言えば当然です。
日本語の字幕がついている映画のことをバリアフリー上映と言っています。
娘はCHARGE症候群という疾患で、産まれつき耳が聴こえません。
補聴器と人工内耳をつけてもほとんど聴こえていません。
聴こえないけれど、漫画やアニメが大好きです。
娘が大好きなアニメの上映があることを知りました。
そこで、字幕付き上映がある映画館と上映時間を調べました。北九州では1か所のみの上映でした。また上映期間も短いのです。
今回娘が見た映画は、上映期間1日のみでした。
すべての映画館で、どの作品も日本語字幕付き上映とはいかないのが現状です。
当日まで、娘はとても楽しみにしていました。映画館に着いてからはパンフレットを購入したり、グッズを見たりとワクワクしていました。
上映が始まり、おおよそ2時間。
集中して映画を楽しんでいました。まさに全集中でした。
娘は、「字幕がついているとお話しがわかっておもしろい」と言います。
また、映画館の大きなスクリーンは自宅のテレビと違い、迫力満点で楽しかったんだそうです。
自宅のテレビとも違う、コミックとも違う、映画館という独特の空気感と迫力を体中で楽しむことができました。
視覚情報で得られる部分も多いですが、やはり「言葉」も一緒になってこその映画です。
現状では、限られた映画館でしか上映がないこと、上映作品が限定的であることが課題ではな
いかと思います。
字幕を付ける作業の大変さと、字幕付き上映のニーズの割合など考えると全国どの映画館でも、どの作品でもとなると、普及は難しいだろうなと感じます。
それでも、聴こえない、聴こえにくい人にも、「映画館で映画を楽しむ」ことを身近に感じて欲しいと思います。
わずかな日本語付き字幕上映を探して行くのではなく、今日は映画が見たい気分だなと思ったその足で映画館に気軽に行けるような。
そんなあたりまえの光景があふれると良いなと思います。
もちろん、娘にも映画館で映画を楽しむことが当たり前になってほしいなと願っています。
聴こえないから楽しめないこともあるのは事実です。
少しの配慮で楽しめることがあるのも事実です。
「バリアフリーってなんだろう?」と難しく考える必要はなく、みんなが楽しめるような工夫や配慮があればよいだけのお話し。
今日はそんなお話しでした。